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『コーヒーの絵本』の赤色の話 [book]

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 前回は『コーヒーの絵本』をつくろうと思った理由を書きましたが、今回は印刷について書きます。印刷に興味がない方、そして印刷に詳しい方や同業者の方はスルーしていただけたら幸いです。ざっくり紹介してますので、細かいところは目をつぶってください。

 通常のカラー印刷は4つの色の掛け合わせで全ての色が表現されています。その4色はCMYKと呼ばれています。それぞれの色の頭文字を取ったもので、Cはシアン(青色)、Mはマゼンダ(赤色)、Yはイエロー(黄色)、Kはキー・プレート(黒なのですが、何で黒がこの呼び名なのかを説明すると長くなるので、ネットで調べてください)。印刷物をルーペなどで拡大して見ると、この4色のドットが重なった状態になっています。4色でいろんな色が表現できる理論はわかっていても、未だに不思議で仕方ありません。

 『コーヒーの絵本』は、通常のカラー印刷とはちょっと違う2色印刷という方法で印刷しました。K(黒)ともう1色カラーチップで色を指定しました。カラーチップで色を指定して印刷することを、特色印刷といいます。
 カラーチップというは、DIC(ディック)やPANTONE(パントン)、 TOYO(トウヨウ)などの色の見本帳。3つともインク会社の名前なんですが、社名がカラーチップの通称になっているようです。DICは日本の会社、ディーアイシー。旧名が大日本インキ工業で、DICはその頭文字を取った名前です。PANTONEはアメリカに本社がある会社。TOYOは東洋インキSCホールディングスというのが正式社名だそう。日本の印刷工場ではDICを使うことが多いようです。

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↑これはDIC。何枚か切り取れるようになっていて、チップを付けて入稿します。よく使う好み色があるので、特定の色だけなくなってしまうというのは、デザイン関係の人あるあるです。

 4色の場合はCMYKの掛け合わせなので、最初は通常は入稿データ通り色校正(色をチェックするための仮印刷とでもいいましょうか)を出します。写真(紙焼き)や絵の原画がある場合は、一緒に印刷会社に渡して、その色に近づけてもらう場合も。そして、色校正を確認して、色の修正指示をしていきます。今回のような特色印刷の場合、印刷機のオペレーターがインクを調合して、指定した色になるべく近くなるように調整します。かなりざっくりいうと、プリントゴッコのような感じで、最初に色を調合して、版下にその色をのせて印刷するイメージです。
 色校正で修正指示をしても、微妙な色調整となると人間の色彩感覚によるところが大きく、著者の方がイメージしている脳内の色を完璧に再現するのはとても難しいです。印刷機が一番細かく調整ができるので、色校正を何度も出すよりも、実際に印刷現場に来てもらい、直接指示をして微調整してもらうのが確実です。

 話は戻って、『コーヒーの絵本』の2色印刷の話。今回のポイントは本全体、赤をいかにきれいに出すかということ。同じインクの調合で印刷しても、紙によって質感や色乗りが違うので全く同じ赤になることはありません。

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 今回はカバー、表紙、帯、本文で4種類の違う紙を使っています。4種類の違う紙を全て同じ赤色に見えるように調整するのが一番苦心したところ。しかも、スケジュールなど諸々も都合で、最初に本文を、その翌日にカバー、そのまた翌日に表紙と帯を印刷することになりました。指定のカラーチップと、最初に刷り上がった本文を見ながらカバーの色調整を。そのまた翌日は本文とカバーを見ながら、表紙と帯の色調整。

 もうひとつ、いつも苦労するのが乾いた後の色の変化。紙によって刷った直後からほぼ色の変化のないもの、印刷した直後よりも色が濃く出るもの、中にはその反対に色が明るくなる紙もあります。いつも大変お世話になっている印刷会社の担当の方が、紙ごとの性質に精通しているので、刷り上がり後の色変化の特性を聞きながら、印刷時の仕上がり具合を文字通り微調整しました。

 ぱっと見、本全体が違和感なく同じ鮮やかな赤色になっていれば成功なのですが、どうでしょうか。紙の質感が違うので全く同じ色にすることは不可能ですが、今回はなかなかいいところまで調整することができたと思います。

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